【プロに聞く】演劇関係者必見!① 演劇を配信する方法とは?|劇団アフリカ座

こんにちは、ZAIKOブログ編集部です。

コロナショックにより劇場での公演が困難になるなどの大打撃を受けている演劇界。Zoomを使った新しいスタイルでの公演を行う劇団ノーミーツなども出てきてはいますが、多くの劇団などが依然として苦境に陥っています。
そんな中、昨年より劇場での無観客生配信公演に取り組み続けているのが劇団アフリカ座です。

今回は、劇団アフリカ座座長の中山浩さん、同劇団のグループユニット ゆうゆうカンパニー主宰の杉山夕さん、配信面でのサポートを行う(株)エクサインターナショナルさんに演劇のライブ配信について、お話を伺いました。

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劇団アフリカ座
2008年より本格的に活動している演劇集団。アフリカ座を母体として、各メンバーがそれぞれ別個に主宰している団体「u-you.company」と「乱痴気STARTER」、アフリカ座が企画・制作するユニット「VIVID COLOR」がある。全ての団体・ユニットの演出を中山浩が手がける。

中山浩
JACや劇団SETなどを経て、つかこうへいや蜷川幸雄など多くの舞台やミュージカルで俳優として活躍。現在は、劇団アフリカ座での演出家を中心に活動。

杉山 夕
u-you.company主宰。アフリカ座では企画公演、VIVIDCOLORプロデューサー、アフリカ座公演衣装プランなども担当。自身の主宰する劇団、u-you.company、VIVIDCOLORでは脚本も担当。

(株)エクサインターナショナル
スタジオ設備を保有し、ポストプロダクション、映像・コンテンツ制作、放送機材レンタルまで映像に関するサービスをトータルに提供。

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演劇のライブ配信に取り組んだきっかけ

ZAIKO編集部:
アフリカ座さんは、昨年2020年7月という早い段階から配信専用公演に取り組んでいます。演劇業界(小劇団)の中でもライブ配信に取り組む団体がほとんどいない状況で配信に踏み切った理由を教えてください。

中山:
もちろん、演劇は【生】が一番というのは、分かっています。
しかし、昨年4月に政府より緊急事態宣言が発令された影響で、多くのイベントやコンサートや舞台公演が中止になり、この状況は長く続くかもしれないという予測と危機感がありました。その状況下で自分たちができる選択肢を考えた結果が、舞台公演を無観客で生配信するということでした。

杉山:
中山は、劇団の活動に対する危機意識から、ライブ配信に取り組むんだ!ということを昨年の早い段階で強く言っていました。
その中で映像関連の仕事をしている知人(エクサインターナショナルさん)を思い出しました。知人もアフリカ座の舞台を観に来てくれていたこともあり、気軽に相談できたのは本当にありがたかったです。

ZAIKO編集部:
具体的にどのように舞台公演を配信するために取り組んでいったのですか?

杉山:
お恥ずかしい話、本当に配信というものがどういうものかまったくわからなかった状態なので、エクサさんにゼロから教えてもらいました。
まずは何をしたら良いのか、どういう機材で配信するのかなど、本当に細かいところまで教えてもらっていった形ですね。

エクサインターナショナル:
アフリカ座さんが継続的に配信公演に取り組める体制づくりを構築するということを目的としてサポートしていきました。
配信に必要な機材の購入に関するアドバイス、配信プラットフォームの選定や運用・設定、配信を行うための劇場へのインターネット回線の導入支援なども行っていきました。

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杉山:
昨年の早い段階でアフリカ座が配信に踏み切れたのは、エクサインターナショナルのスタッフさんのサポートがあってこそですね。私たちは、「配信って何?」という状態からのスタートだったので(笑)

エクサインターナショナル:
私たちは、あくまでスタジオ施設運営や撮影機材レンタルなどで培ったノウハウを使ってサポートさせてもらった形です。アフリカ座さんの舞台を生配信するんだという熱意があったからこそできたんだと思います。

あとは、アフリカ座さんの配信への振り切り方ですね。配信を行うにあたり、継続的に取り組むことの必要性を伝え、配信対応のカメラなどの配信機材も購入していただきました。初期段階で思い切って投資して配信機材等を用意したことで、その後のアクションに取り組みやすくなった点は大きいと思います。

中山:
コロナ禍の先行きが見えない状況で、このまま何もせずコロナが収まるのを待っていると自分たちの劇団だけでなく、公演させてくれている劇場、関わってくれているスタッフさんも生き残っていけないと考えて実行しました。

エクサインターナショナル:
公演のたびに機材をレンタルする、スタッフを手配するなどが必要だったら、トライ&エラーをしながら取り組み続けるのは難しかったかもしれません。配信に取り組みはじめた段階では、劇団員さんが配信機材の使い方まで覚えて、自分たちでスイッチング(画面を切り替え
る)作業までできるようになるとは思ってもいませんでしたが、、、(笑)

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2020年7月に配信された劇団アフリカ座特別企画公演・私はここにいますproject 『ほんとにあった世間話~OL編~』

配信でも観客との“時間の共有”はできる

ZAIKO編集部:
「生の舞台」を重視する演劇界では、依然として配信に対するネガティヴなイメージもあると思いますが、その点についてはどう感じていますか?

中山:
うちの劇団はコメディを主体にやっているのですが…例えばこのコロナ禍で劇場に来て、笑いたくても周りの目を気にして笑えなくなったり、隣の人が咳払いをし出した時に集中して芝居が見られるでしょうか?
思いっきり芝居を楽しめないのであれば、自宅でゆっくり楽しんでもらいたい。何より、「お客様が心おきなく楽しめる」事が一番だと私は考えます。

杉山:
私たちは、舞台での演劇公演を収録して配信するのではなく、“生”での配信に強いこだわりを持って取り組んでいます。そのため、公演の告知画像にも、LIVE配信専用演劇という言葉も入れています。

中山:
自分達もそうなんですけど、有観客で芝居を見る時には、この先何が起こるか分からない、失敗するかもしれない、という緊張感も込みで楽しんでいるんだと思うんですよね。録画での配信だとその緊張感が味わえないと言うのは、分かります。だからこそ、生に拘ってやっているんです。例えば、スポーツ観戦でも、生中継されているものを見て一喜一憂しますよね? それと要領は同じだと思うんですけどね。

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2021年9月開催の劇団アフリカ座 第20回本公演 『KEIJI』の告知画像。右上にマルチアングルLIVE配信専用演劇と記載されている。

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ZAIKO編集部:
でも、この“生”の配信を行うことについては、アフリカ座さんは、ずっとこだわってらっしゃいますね。

杉山:
毎回の公演を“生”で配信するとコストはかさむんですけどね(笑)

舞台公演の配信ならではの演出方法とは?

ZAIKO編集部:
アフリカ座様にとって配信の魅力はどういったところにあるのでしょうか?

中山:
劇場で行うリアルの演劇公演だと、座席によっては舞台上の役者の細かな表情まではわからないこともありますが、配信であれば役者の全ての表情をわかるのが魅力だと思います。

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自分達もそうだったんですけど、通常有観客で芝居をやる場合は、客席に向かって芝居をするので、それを映像に収めようとすると、どうしてもカメラが役者を追う形になります。しかし、今は配信専用でやっているので、カメラが役者を追うのではなく、基本的にはカメラを正面と舞台上下に高低差を付けて定点で置き、そのカメラのフレームに役者が飛び込んで来るようにしています。そうすることで、通常客席から舞台を見ていて、そこに役者が飛び込んで来る感覚と同じ感覚になれるかなと。

ZAIKO編集部:
配信を始めたことで、作品の作り方にも変更はあったのでしょうか?

中山:
脚本に関しては、再演のものは、変更せずにそのままやっていますし、新作も、通常の舞台でやることを前提として作っていますので、特に配信用の脚本づくりはしていません。演出的にも、立ち位置などを映像で見て面白いようにと変更することはありますが、作品の作り方、芝居自体は大きく変えてはいません。

ZAIKO編集部:
映像に関して、どのような工夫をされているのでしょうか?

中山:
一番気を付けている事は、舞台感を損なわないことです。

杉山:
リアルに近い質感を出すことで言えば、舞台上で役者と役者が入れ替わる時に映像も切り替えるのですが、あえて役者の去り際を映像に残すようにして切り替えています。

そうすることでいかにも編集したような映像になってしまうことを防ぎ、舞台を観ている感覚が損なわれないようにしています。映像のスイッチングのタイミングは中山が決定し、操作はその時に舞台に出演していない劇団員が担当しています。スイッチングを担当する劇団員は稽古時から、配信機材を使ってスイッチングを行う稽古も役者と同じ数、重ねています。そうすることで、プロの音響さん、照明さんなどとしっかりとしたコミュニケーションを取りながら、一つの生の映像を作り上げています。

中山:
技術的な話になると配信ではカメラを同じ高さにして撮影してしまうと映像が平坦で面白みのない映像になってしまいます。そのため、設置するカメラの高さをそれぞれに変えて、舞台のセットを映像的に歪ませた状態も作り出しています。そうすると映像が平坦にならずに緊張感や臨場感などが出て、配信ならではの生の舞台感を出すことができます。
もちろん、有観客でやっている時に行っていた、照明、音響効果も配信専用になっても取り入れています。

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映像的に歪ませた状態を作り出すために、正面カメラよりも低い高さで設置された舞台下手カメラからの映像。

エクサインターナショナル:
アフリカ座さんは、舞台を配信で観たお客様が満足してもらえるように本当に試行錯誤しながら、色々と取り組まれてきましたね。

杉山
ゼロからのスタートだったし、“生”配信にこだわってきたのでそのぶんだけ大変なこともありましたね(笑)

中山
演劇を配信するにはそれに合わせた演出もしっかり取り入れていかないと、"配信はリアルのオマケ"みたいに捉えられてしまう恐れがあります。
お客様からチケット代を頂いている以上、それに見合った作品を作っていかないといけないと思っています。 

演劇の配信公演には希望がある!

ZAIKO編集部:
小劇団が100人キャパ位の劇場で配信を行う際の予算はどれくらいかかるのでしょうか?

エクサインターナショナル
配信用の機材にかかる経費については、アフリカ座さんには初期の段階で数十万を使って購入して頂きました。配信スタッフに関しては、1人数万円×人数というものだと思います。

杉山:
あくまで参考ですが、100人キャパ位の劇場で、配信ではない通常公演を行う場合のおおよその総制作費(劇場費用・衣装など)は、200万円位ではないでしょうか。そこにエクサさんが仰ったように撮影機材、配信機材、配信スタッフ代がプラスされます。機材はレンタルするという方法もありますけど。

ZAIKO編集部:
どうすれば、配信分を補うことができるのでしょうか?

中山:
月並みですが、お客様に配信でもお金を払って観たいと思ってもらえる作品を提供する、これに尽きると思います。すごく単純に言えば、有観客の時と比べてお客様を3割増しで入れることができれば、配信費用の問題は解決できます。逆に3割増し以上にチケットを販売することができれば、有観客だけの時よりも利益が出ますよね。座席数に限りのある劇場での有観客と違い、チケット枚数に上限がない配信は希望があると思うんですよ。

杉山:
配信は自分たちのやり方次第によって、全国・世界に広げていける可能性があることを、"演劇は生が一番"だと思っている過去の自分たちのような演劇関係者にも知ってもらいたいですね。

中山:
それから、これは自分達も実際に配信公演をやってみて初めて気が付いたんですが、配信だと地方在住や、子育て、仕事の都合など様々な理由でなかなか劇場に来られない方達にも見てもらう事が出来ます。これは大きな発見でした。

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ZAIKO編集部:
最後に、演劇の配信に取り組みたい方へのアドバイスをお願い致します。

中山:
まずはやってみましょう!の一言に尽きると思います。

杉山:
私達も、ゼロからのスタートで、もちろん大変な事もありましたし、沢山の方のお力を借りてやらせて頂いていますが、中山も言っていたように実際にやってみて、気付いた事や、希望も沢山あります。
だから、取り組みたい方はまずは一歩踏み出してみる事だと思います。
私達がお答えできる事は何でもお答えしますので、遠慮なく聞いてください!(笑)

エクサインターナショナル
弊社でも配信に関するサポートをさせて頂きますのでぜひお気軽にご相談ください。

次回は、SNSを活用したファンとのコミュニケーションやプロモーション、配信したコンテンツの活用方法として現在取り組んでいる月額制の映像サブスクリプションサービス「アフリカ座PLUS」などについても伺います。

https://note.com/embed/notes/n5ef71db90ebf


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