【プロに聞く】ライブ配信ではなくプロが作り込んだ映像作品を配信するコンテンツレーベルTongpoo、その意図は?

電子チケットプラットフォームZAIKOのさまざまな機能を活用して、音楽や舞台などのエンタメを届けているプロフェッショナルな方々に話を聞く【プロに聞こう!】シリーズ。今回は作り込んだ映像でアーティストの魅力を引き出しているコンテンツレーベル「Tongpoo」の末廣孝太さん(代表)と木佐貫潤さん(プロデューサー)


電子チケットプラットフォームZAIKOのさまざまな機能を活用して、音楽や舞台などのエンタメを届けているプロフェッショナルな方々に話を聞く【プロに聞こう!】シリーズ。今回は作り込んだ映像でアーティストの魅力を引き出しているコンテンツレーベル「Tongpoo」末廣孝太さん(代表)と木佐貫潤さん(プロデューサー)に話を聞きました!

コロナ禍でエンタテインメントを止めないために

ZAIKO編集部:
まず初めに、「Tongpoo」の自己紹介をお願いします。

末廣:
「Tongpoo」は、エンタテインメント業界の中で、デジタルコンテンツに特化しながら、そのときそのときの社会の動きを含めて必要とされるモノやコト、場所を作っていくレーベルです。2020年夏頃に国内最大級のイベントスペース新木場STUDIO COASTさんの協力もあって立ち上がったプロジェクトです。すべてのシーンではありませんが、必ず毎回STUDIO COASTでライブシーンの撮影を行っています。

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ZAIKO編集部:
どういういきさつで立ち上がったのですか?

末廣:
僕は「喜ばせ屋」という会社をやっていまして、企業のブランディングなどに携わっています。その中でイベントの事業があるんですね。社員総会だったり、アワードだったり、プロモーションだったり、さまざまなイベントを手掛けるのですが、そこでSTUDIO COASTさんと仕事をさせていただく機会があり、そのときのご担当が木佐貫さんでした。

僕自身、DJをやったりクラブにお客さんとして遊びに行ったりする人間だったので、木佐貫さんとは共通の話題もあり意気投合しました。

いろいろ話していくうちに、コロナ禍でエンタテインメント業界が置かれている厳しい状況についても話し合うようになりました。実際、自分の会社にもそれなりの打撃がありましたし、周りでも会社がなくなってしまったり、職を失ってしまう人が出てきたりしているような状況で、何か自分たちにできることはないだろうかと考え始めたがの発端です。

とにかく「エンタテインメントを止めてはいけない」と。エンタテインメントを作る人たちが働いて、もっと輝けるようなフィールドを新しく生んでいかなければならない。それを共に作っていこうとしているのが「Tongpoo」です。

ZAIKO編集部:
木佐貫さんはSTUDIO COASTのスタッフとしての立場から参加されています。立ち上げ当時に考えていたことを教えてください。

木佐貫:
2020年の5月頭あたりに末廣さんから話をうかがって、ちょうどSTUDIO COASTもコロナの影響もあり、スケジュールがバタバタと空いていくのを目の当たりにしていた時期で、なんとかしなければならないと考えていたので、STUDIO COASTを使った新しい試みとして「Tongpoo」で何か作っていけたらいいなと思いました。

作り込まれた映像に引き込まれる「Tongpoo videos」

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ZAIKO編集部:
「Tongpoo」が手掛ける映像作品「Tongpoo videos」のvol.1を見て、STUDIO COASTがうまく使われているなと感じました。作品としてはドキュメンタリーとライブアートを組み合わせた構成で、DJ KENTAROさん、横笛の演奏家である藤舎貴生さん、ライブペインティングアーティストのJUN INOUEさんという組み合わせも意欲的ですね。

末廣:
この作品は、当初「Tongpoo」が掲げている「NON STOP ENTERTAINMENT」という言葉のコンセプトムービーを作ろうということからスタートしていて、まず、メラメラとした日本のスピリットを表現したもの、日本人の心に火をつけられるものを出したいと考えました。

それはどんなものだろうと考えたときに「君が代」が頭に浮かびました。国歌は、その国の特徴がよく表れるものだと思いますが、「君が代」は欧米の国歌と違って、心の奥底でメラメラと魂が燃えたぎっているんだけど表に出ていかない独特のものがあります。そういう日本の美学に沿って伝えていけたらいいなと。

日本の古典芸能の世界で活躍されている藤舎貴生さんはもちろん、KENTARO君も自身の作品やルーティーンに和の要素を持ち込んでいるし、JUN君も日本の書に影響を受けている。3人には日本の美学という接点があり、今回の作品を作る上でベストな人選だったのではないかと思います。

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ZAIKO編集部:
そのコンセプトにSTUDIO COASTの空間がさらに独特なムードを重ねていますね。

木佐貫:
そうですね。特徴的な赤いスピーカーや世界でもあまりないような形のトラスや、大型のミラーボールがある空間で3人のトライアングルが出来上がった。あの空間で一番表現したかったのは、最後、幕が上がって噴霧器でJUNさんが描いていくところです。STUDIO COASTの床から側面まで生かした演出で、これはぜひ見てほしいですね。

ZAIKO編集部:
「Tongpoo videos」は、ライブ配信ではなく映像作品として完成したものを配信するスタイルですが、その意図は?

末廣:
そこは断固として譲りたくないところです。ライブ配信を見ていると、ちょっとしたハプニングで現実に引き戻される瞬間がありますよね。それが楽しみの一つでもあるのですが、自分たちが映像配信をやろうと考えたときにその選択肢はなくて、最大限クオリティを高めたものを提供したいと考えました。

木佐貫:
それに加えてライブ配信にはリスクもつきまといます。インターネットにつながると思っていた場所が、実はつながらなかったとか。自分はもともとテクニカル上がりなので、そこは気になりますね。

末廣:
とはいえ、「Tongpoo videos vol.1」のライブシーンは一発撮りです。収録ではありますが、ライブのスリリングな部分を出したくて。演者の微妙なミスもそのまま残していますし、ラストが予定されていた演出と違ったりもします。

https://vimeo.com/468388009

ZAIKO編集部:
どんなふうに違ったのですか?

末廣:
最後、ばっと幕が上がり、貴生さんが笛を吹きながら歩いて行って、KENTARO君がそれに合わせてスクラッチを入れていくところで、JUN君が出てきたら貴生さんは元の立ち位置に戻る予定だったんですが、貴生さんは戻りませんでした。

ZAIKO編集部:
ご自分の判断で。

末廣:
そうです。貴生さんは、KENTARO君とJUN君がやっていたことを生で感じたときに自分は戻らない方がその場のパフォーマンスを最大限上げられる自信があったので戻らなかったそうです。現にそれをKENTARO君とJUN君も感じていて、セッションのスリリングな気迫と緊張感をぐっと高めた形で締められて、終わった後にめちゃくちゃ気持ちよかったと言っていました。

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ZAIKO編集部:
これは見どころですね。続いてPUNPEEさんをフィーチャーした「Tongpoo videos vol.2」、SO-SOさんをフィーチャーした「Tongpoo videos vol.3」についても聞かせてください。

末廣:
PUPEEさんの作品は、彼のアイコンとしてのキャッチーさを生かしたドラマのような作りです。地元からSTUDIO COASTに成り上がっていくというストーリーで、Summitのクオリティを存分に楽しんでもらえると思います。

https://youtu.be/cAHsM3G-c2c

vol.3のSO-SO君は、vol.1とvol.2を足して2で割ったようなバランスですね。STUDIO COASTでのライブシーンは演出の凄さを見てほしい。照明やレーザーといったテクニカルスタッフの技術力、スキルを感じてもらいたいです。

https://youtu.be/qFzXmBRB1V0

ZAIKO編集部:
ライブの演出はSTUDIO COAST側で考えられたのですか?

木佐貫:
そうです。PUNPEEさんの方はロンドンバスも含めて全体的なプランニングと、最後の3曲のライブはSTUDIO COASTのオペレーターがすべて担当しています。

SO-SO君の方はライティングエンジニアに演出を考えてもらって、SO-SO君のプレイがSTUDIO COASTの中で最大限生きる形にしています。具体的にいうと、KENTARO君やPUNPEEさんはステージの真ん中でパフォーマンスしてもらっていますが、SO-SO君はageHaのときに使うDJブースでLEDをバックにやってもらっています。場所を変えるだけで世界観が全然変わるんですよ。

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ZAIKOは視聴者に直接リーチできるのが魅力

ZAIKO編集部:
配信にZAIKOを選ばれた理由を教えてください。

末廣:
僕たちはまだ走り出しのスタートアップなので、自分たちのファンを増やしていかなければならないと思っています。そう考えたときに、ZAIKOはどういう人が見にきてくれたのかという顧客情報(チケット購入者の属性・統計データをリアルタイムに表示するCRMツール)が管理画面から得られるのでありがたい。それを見ながら次の戦略が練られますし、「Tongpoo」は映像だけでなく「Tongpoo store」というECもやっているので、直接ファンに発信できるのは強みになります。

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木佐貫:
あと、ZAIKOにカスタマーサポートなど窓口があるので、何か困ったときに相談できるのは心強いです。STUDIO COASTって自主興行をほとんどやらないので、実はZAIKOのイベント主催者ページを今回初めて触ったんです。あれだけいろんなイベントをやっているのに(笑)。

ZAIKO編集部:
先ほどECの話がありましたが、取り扱う商品の方向性などは決まっているのですか?

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末廣:
可能性のあるものは何でもやっていきたいと思っています。ただ、アーティストとアーティストの掛け合わせ、メーカーとメーカーの掛け合わせはやるつもりはなくて、カルチャーとカルチャーの掛け合わせをやっていきたい。オヤイデ電気のアパレルが良い例です。オヤイデといえば音楽好きには有名で人気がありますが、そのアパレルって何だか夢の話みたいな感じなんですよ。そういう掛け合わせをうまくやっていきたいです。

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ZAIKO編集部:
これは聞いておかなければならない質問です。STUDIO COASTは2022年1月30日で閉館することが決まっていますが、「Tongpoo」との関わりはどうなるのでしょうか?

木佐貫:
まず会場があるうちは「Tongpoo videos」の制作は行いたいですし、出演してくれたアーティストやチーム、ファンを集めたリアルイベントもやってみたいですね。閉館した後もアーティストに見合う表現のできる場所があれば「Tongpoo videos」は制作できるので、個人的には続けていこうと思っています。

ZAIKO編集部:
リアルイベントの開催は楽しみですね。コロナ禍が収束した後、「Tongpoo」のあり方は変わっていくのでしょうか?

末廣:
スタートするときに、リアルが戻ってきたときのことを想定して動き出しているので変わらないです。ライブの切り出しではなく収録映像にしているのもその理由の一つです。リアルが戻ってきたときに価値のあるコンテンツにするべきだなと。また、リアルのライブイベントの前に僕たちの映像コンテンツがあって、プロモーションを含めた導線の一角を担えるような存在にもなれるかなと考えています。リアルと共存しながら、さらに新しい体験を生み出していきたいです。

ZAIKO編集部:
最後に、今後予定されているコンテンツを教えていただけますか?

末廣:
BOOM BOOM SATELLITESの中野雅之さんが結成したTHE SPELLBOUNDのドキュメンタリーを制作中です。

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木佐貫:
BOOM BOOM SATELLITESはSTUDIO COASTにとっても大変お世話になったアーティストで、ボーカルの川島道行さんが亡くなった後のラストライブもやってもらいました。なので、中野さんがTHE NOVEMBERSの小林祐介さんと組んでTHE SPELLBOUNDとして動き出すと聞いて、「Tongpoo」への出演オファーをさせてもらいました。リキッドルームでの初ライブ、フジロックフェスティバルでの圧巻のライブ、そしてSTUDIO COASTにTHE SPELLBOUNDとして戻ってきたよというムービーを撮って、10月ごろにZAIKOで配信できれば。その後12月にSTUDIO COASTで有観客のライブも想定しています。

ZAIKO編集部:
それは楽しみですね。期待してます!

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Tongpoo
https://tongpoo-tokyo.com/
映像コンテンツの「Tongpoo videos」とECの「Tongpoo store」からなるコンテンツレーベル。自主企画での制作を行うほか、ブランドや企業とのコラボレーションも行なっており、映像制作やライブの演出、プロダクトの開発を相談することも可能。

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