作成者: Zaiko|Apr 29, 2020 3:00:00 PM
新型コロナウイルス感染拡大の影響で、エンタテインメント界、音楽界も多大な影響を受けている。ライブやイベントなどの興行ができない今、無観客ライブ配信やSNSを活用する場合も多いが、“無料”であるがゆえに根本的な解決にはならない。そこで注目されているのが“有料”のライブ配信だ。批判覚悟で行った有料ライブ配信の内情、そして“コロナ後”への可能性を探った。
Yahoo!Japanニュース
https://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20200429-00000309-oric-ent&p=2
■資金力がないと「無料」は難しい、有料ライブ配信に予想外の反響
ライブやイベントなどの興行ができない、今後もいつできるのか先行きが見えないことは、業界で働く人々にとって死活問題と言っても過言ではない。実際、予定していた公演が中止・延期され、払い戻し金なども発生して「この状態では活動を続けられない」と訴えるアーティストもいた。
そんななか、日本でも感染拡大の危機が増した3月には、aikoやジャニーズタレントなどの大物アーティストが無観客ライブを行い、無料で配信を敢行。これには、多くのファンから「元気が出た」という声が上がり、感染予防の啓蒙にも繋がった。だが、そこはあくまで“無料”であるがゆえに、アーティスト側の直接の利益にはならず、むしろ機材費、会場費などの持ち出しが発生。体力のないアーティスト、主催者には不可能であるし、継続的に行うことも難しく、直接的な問題解決とはならない。
このような無料ライブ配信が行われるなか、あえて“有料ライブ配信”に踏み切ったのが、cero(セロ)というバンドだ。3月13日に予定されていた仙台公演が中止となり、有料ライブ配信に踏み切ったという。彼らが所属するレーベル・カクバリズムの仲原達彦さんは、「他のアーティストが無料配信を行っている中、有料にして本当にチケットを買ってもらえるのか、不安もあった」と当時のためらいを語る。だが、ふたを開けてみれば、告知はSNSや公式サイトのみだったにも関わらず、1枚千円のチケットは予想を上回り5千枚以上が購入され、有料ライブ配信は大成功を収めた。「資金力があれば無観客ライブの無料配信もできますが、インディーズバンドでは難しい。今回有料配信をやってみて、お客さんの『アーティストに還元したい』という気持ちもわかり、とてもありがたかったです」と仲原さん。この成功後には、同業者からたくさんの問い合わせがあったそうだ。
■「叩かれる覚悟」だった有料配信、エンタメ業界やIT業界も注目
アーティストなどが有料ライブ配信を行う場合、様々なプラットフォームが存在する。YouTubeでも有料配信や投げ銭が可能だし、SHOWROOMほか様々なアプリを活用している人も多い。今回、上記のceroが使ったのは、もともとインバウンド等も視野に入れた電子チケットプラットフォーム『ZAIKO』が運営するシステムだ。
『ZAIKO』は2020年の5Gサービスのスタートに伴い、夏秋に有料ライブ配信サービスをスタートさせる予定だったが、新型コロナウイルスの影響を受けるアーティストをなんとか支援できないかと急ピッチで開発を進めたという。同社の大野晃裕さんは、「他の投げ銭アプリではURLを共有するなどして誰でもライブ配信を見られますが、『ZAIKO』ではチケットを購入した人しか見られないという特別感があります。また、『支援したい』という気持ちで始めたため、投げ銭の手数料が他社より安価で、アーティストへの還元率が高い。ファンの『応援したい』という気持ちとも合致し、アーティスト側の皆さんにも使いやすい機能になっているのではないでしょうか」と、その有用性を語る。
同社にとっても初の試みとなったceroの有料ライブ配信では、「有料であることで、叩かれる覚悟をしていた」と言うが、実際にはネガティブな反応もなかった。エンタメ業界、IT業界からも広く注目を集め、ファン以外がチケットを購入するケースも多かったという。3月初旬のローンチから1ヵ月ほどで、配信数は約70件以上。ceroの配信後には1日100件近くの問い合わせがあったという。
■コロナ禍越え5Gがスタートしたら…未来に繋がるライブ配信の可能性
これらの取り組みは、コロナ禍の影響で実施されたものではあるが、今後のエンタメ界にも大きな影響を及ぼしそうだ。大野さんは、「日本人は新しいものに馴れるのに時間がかかりがちですが、今回ライブ配信という新たな気づきを得たことで、大きく変わる」との予想をしている。「たとえば、今は端末が対応していなくても、5Gスタートにより、配信はライブの一つの手段として可能性を広げます。5Gを使った配信ならではのテクノロジーが生まれ、ユーザーは新しい価値を体験できるのではないでしょうか。会場に来ることが難しいお客さんも、気軽にライブ楽しめるようになると思います」(大野さん)。
元々が電子チケットを扱う会社のため、アーティスト側がユーザーデータを知ることができ、双方向のコミュニケーションが生み出すものもある。カクバリズムの仲原さんもをそれを実感しており、「配信を見てくれた方が顧客となり、実際のライブにも還元できるのでは」と、今回の配信が未来に繋がることを願っている。
■「今は助けを求めるとき」、エンタメの火を消さない取り組みを
コロナの影響は、医療はもちろん、すべての生産活動に影響しており、生活必需品ではないエンタメは軽んじられる傾向にある。だが、そこで働き、生きる人々がいることも事実だ。だからこそ、アーティスト、プラットフォーム、会場などに関わる人たちは、それぞれが生き残りをかけて今できることを模索している。
「今はアーティストはもちろん、ライブハウスも苦しい。クラウドファンディングなどには二の足を踏むところもあるが、今は遠慮なく助けを求めるときだと思っています。私たちもライブハウスなどと協力し合ってクオリティの高いコンテンツを制作するなど、できることをやっていきたいですね」(仲原さん)